バオバブを見上げ、キツネザルに近づく。マダガスカルで出会った不思議な時間

バオバブを見上げ、キツネザルに近づく。マダガスカルで出会った不思議な時間

今長谷写真
今長谷

こんにちは、ネイチャーガイドの今長谷です。

旅をしていると、「遠くまで来たな」と思う場所と、「こんなに遠いのに、どこか懐かしいな」と感じる場所があります。マダガスカルは、その二つが同時にやってくる国でした。世界的に知られるバオバブ並木、森の中を軽やかに動くキツネザルたち、赤い土の道、夕方の光、そして人の暮らしの気配。アフリカの島とひとことで言ってしまうには、あまりにも多くの表情がありました。

バオバブ|マダガスカル旅行@ブループラネットツアー
私がこの島に惹かれたきっかけは、はっきりしていました。ひとつは、バオバブ並木をこの目で見たかったこと。もうひとつは、ここでしかまとまって出会えない原猿たちの姿を見たかったことです。でも実際に行ってみると、心に残ったのはそれだけではありませんでした。光の色、土の匂い、森の湿り気、遠くから聞こえる鳴き声、ふいに現れる人の暮らし。そういうものが重なって、マダガスカルはただの“珍しい旅先”ではなく、じわじわと記憶に残る場所になった気がします。

マダガスカル旅行で惹かれた理由とは?
バオバブ並木とキツネザルに会いたかった

私がマダガスカルに行きたいと思った理由は、かなり明確でした。まずは、やはりバオバブ並木です。あの木の姿は写真で見ても一度で覚えてしまうくらい強烈で、ずっと頭の片隅に残っていました。もうひとつは、キツネザルをはじめとした原猿の仲間たちです。昔の猿の面影を残したような、どこか不思議な生きものたちがこの島には数多くいて、それを自分の目で見てみたかったんですね。
ただ、実際に旅をしてみると、マダガスカルの魅力は“見る対象”だけではありませんでした。アフリカに近いのに、空気の中にアジアや中東の影響が混じっている。人の顔立ちや町の雰囲気、水田の広がる景色を見ていると、ふっと東南アジアに似たものを感じることがあるんです。遠くまで来ているはずなのに、ときどき「なんだか少しだけ親しみがあるな」と思う。その不思議さが、この国の印象をぐっと深くしていました。

バオバブ並木の見どころは?
夕陽の中で見上げる巨木は、想像よりずっと大きい

バオバブは、写真で見ているうちは「変わった木」くらいの認識かもしれません。でも、実物を前にすると、その印象は一度きれいに壊れます。近づいて見上げると、とにかく大きい。幹の太さも、高さも、人が作った巨大な塔のようで、私は思わず「これは木というより建造物に近いな」と感じました。少し大げさかもしれませんが、ガンダムを見上げるみたいな感覚、と言った方が近いかもしれません。

しかもその巨木が一本だけではなく、道沿いにすっと立っている。空に向かってまっすぐ伸びる姿には、かわいらしさよりも、むしろ静かな威圧感があります。足元には赤茶けた乾いた土が広がっていて、風が吹くと細かな砂がさらりと動く。西海岸の光は強いのに、夕方になるとその強さが少しずつやわらぎ、幹の表面に金色っぽい光が残るんですね。暑さの中にも、夕暮れが近づくと少し空気がゆるむ感じがあって、その変化まで含めて、あの並木は忘れがたい風景でした。

バオバブ並木の夕景が心に残る理由。
私はあの時間をゆっくり見たくて、二日間を入れていました

バオバブ並木は、昼間に見てももちろん印象的です。でも私の中では、やはり夕方の時間が特別でした。太陽が傾きはじめると、赤土の色が少しやわらぎ、木の影がゆっくり長く伸びていきます。空は派手すぎないのに、じわっと色を変えていく。その下でバオバブの輪郭だけが、かえってくっきりしてくるんですね。あの時間帯には、昼間の“珍しい景色を見た”という感覚とは違う、もっと静かな感動があります。
今長谷写真
今長谷

あの風景を一度だけではなく、ゆっくりいろんな表情で見たくて、二日間を計画に入れていました。空の色は毎日同じではありませんし、風の感じや雲の出方で、見える景色も少しずつ変わります。せっかくそこまで行くなら、ただ写真を撮って終わるのではなく、光がやわらかくなる時間まで立っていたい。そういう気持ちがあったんです。夕方になると、まわりの人たちの声も自然と少し小さくなって、どこかみんなが空を見上げる側に回る。その空気も含めて、バオバブ並木の夕景は心に残りました。

マダガスカルのキツネザルとは?
森の中で目が合うと、急にこの島が近くなる

マダガスカルで会いたかったもうひとつの存在が、キツネザルたちでした。実際に森に入ってみると、彼らは“珍しい動物”というより、この島の空気そのもののように感じられました。枝の上にふわっと現れて、すっと移動していく。猿ほど人間くさくなく、でも完全に野生の獣とも違う、独特の距離感があるんですね。
ワオキツネザル|マダガスカル旅行@ブループラネットツアー
印象的だったのは、こちらが思っているよりずっと近いことでした。もちろん種類や環境によりますが、かなり近くまで寄ってくることがある。こちらの顔をじっと見て、「何してるの?」とでも言いたげな表情を向けてくることもあって、そのたびに思わずこちらの気持ちもやわらぎます。動物園のように隔てられていないぶん、同じ空気の中で目が合う感じがある。あの距離感は、やはり現地でしか味わえないものだと思いました。
今長谷写真
今長谷

森の中では、足元の土はやわらかく、ところどころ湿り気が残っています。葉が擦れる音、枝がしなる気配、遠くで鳴く鳥の声。そういう背景の中にキツネザルの姿が現れると、風景が急に生き始めるんですね。視覚だけではなく、耳と肌で受け取る動物との出会いだったように思います。

シファカとインドリの魅力とは?
跳ねる姿と森に響く声が忘れられません

キツネザルの仲間の中でも、特に印象に残ったのがシファカとインドリです。

シファカは、白っぽい毛並みを持つ原猿の一種で、森の中ではどこか神聖な雰囲気さえあります。ところが動き出すと、とても軽やかなんです。ぴょん、ぴょんと横に跳ねるように移動する姿は、初めて見ると本当に不思議で、少し笑顔になります。森の中の緊張感の中に、ふっと軽さを運んでくるような存在でした。
インドリは、マダガスカルに生息する大型の原猿の一種で、その姿ももちろん印象的なのですが、何より記憶に残るのは声です。森の奥から響いてくる鳴き声が、ただの動物の声というより、森そのものが遠くで息をしているように聞こえるんですね。あの声を聞くと、人は自然に足を止めます。目で探す前に、まず耳が先に反応する。マダガスカルの森は、そういうふうに“音から始まる出会い”がある場所でした。

マダガスカルの森で出会うカメレオンの見どころ。
見つけた瞬間、こちらの感覚が少し変わる

森の中では、つい大きな生きものや動きのあるものに目が行きがちです。でもマダガスカルでは、よく見ないと気づけない生きものの存在感もとても大きかったです。その代表がカメレオンでした。
カメレオン|マダガスカル旅行@ブループラネットツアー
葉の色や枝の影に溶け込むようにじっとしていて、案内してもらわなければ気づかず通り過ぎてしまうこともある。目の前にいるのに見えない。見えていなかったのに、一度わかると急にそこだけくっきり見えてくる。その感覚が面白いんです。森の中では、派手なものだけが主役ではない。気配を読むこと、目を凝らすこと、立ち止まること。そういう感覚の使い方そのものが、マダガスカルの自然に向き合う時間だった気がします。
今長谷写真
今長谷

足元の土の匂い、葉の裏にこもる湿気、少し蒸した空気の重さ。そういうものの中で、小さな命がちゃんとそこにいるとわかる瞬間には、旅先でしか得られない集中があります。見つけたときの小さな驚きは、派手ではないのに、とても深く残ります。

マダガスカルの風景はなぜ懐かしい?
アフリカなのに、どこかアジアに似ていました

この国を歩いていて面白かったのは、自然の強さだけではありません。移動の途中で見える風景に、ときどき「どこかアジアっぽいな」と感じる場面がありました。水田のように広がる田んぼ、赤い土、道のそばで動いている人の暮らし。その雰囲気は、いわゆる“アフリカの荒野”だけを思い描いていると、かなり印象が違うと思います。

日本人は、完全に未知のものに惹かれる一方で、どこかに少しだけ“わかる感じ”があると、急にその国との距離が縮まることがありますよね。マダガスカルには、それがありました。遠い島なのに、少しだけ懐かしい。異国なのに、少しだけ入りやすい。その感覚は、景色だけではなく、人の気配や町の空気にもありました。だからこそ、ここは「すごかった」で終わる場所ではなく、「なんだか気になる」があとまで残る国なのだと思います。

マダガスカル旅行で心に残った暮らしの風景。
洗濯物の色まで、この国の記憶になりました

旅先で強く記憶に残るのは、有名な名所ばかりではありません。マダガスカルで私の中に強く残ったのは、道沿いや川辺で、人々が洗濯物を石の上や地面いっぱいに広げて干していた風景でした。見渡すと、ほんとうに一面が洗濯物の色に見えるくらいで、その光景が妙に忘れられないんです。
今長谷写真
今長谷

観光のために整えられた景色ではなく、その土地で人が生きていることが、そのまま見えている。風が吹くと布がふわりと揺れて、赤土の色や空の明るさと混ざっていく。派手な風景ではないのに、旅が終わってから思い出すのは、案外こういう場面だったりします。名所ではないけれど、その国の呼吸が感じられる。マダガスカルには、そういう一瞬がちゃんとありました。

マダガスカルの食事はおいしい?
自然だけでなく、食の時間にもほっとしました

もうひとつ、いい意味で予想を裏切られたのが食事でした。行く前は、マダガスカルでは自然や動物が主役で、食事はその次くらいかなと思っていたんです。でも実際には、かなりおいしい。フランス文化の影響もあって、料理がきちんとしているんですね。旅先では食事が合うかどうかで、その国との相性まで変わることがありますが、マダガスカルはその点でも気持ちよく過ごせる場所でした。

自然の中を歩いて、動物を探して、移動もある。そういう日々の中で、夕方にちゃんとおいしい食事が待っているというのは、思っている以上に大きいものです。皿から湯気が立って、ふっと気持ちがゆるむ。そういう時間があるだけで、旅全体の印象はぐっとやわらかくなります。私は、その国の自然だけでなく、食卓の余韻も旅の一部だと思っています。マダガスカルは、その余韻まできちんと残る国でした。

マダガスカル旅行の見どころは絶景だけじゃない。
時間の流れごと持ち帰りたくなる島でした

今長谷写真
今長谷

この旅を振り返ると、もちろんバオバブ並木も、キツネザルたちとの出会いも、大きな魅力でした。でも、心に残ったのはそれだけではありません。森の奥から聞こえる声、土の匂い、夕方の風のやわらぎ、道ばたで揺れる洗濯物、どこか親しみを感じる田園の風景、そして食卓でほっとする時間。そういう細部が重なって、マダガスカルという国の印象をつくっていた気がします。

バオバブを見上げ、キツネザルに近づき、森の音に耳を澄ませる。ひとつひとつは派手すぎる体験ではないかもしれません。でも旅が終わったあとに残るのは、案外そういう静かな実感だったりします。世界にはまだ、こんな時間の流れ方をしている場所がある。マダガスカルは、そんなことを思い出させてくれる島でした。もし、まだ知らない世界を少しだけのぞいてみたいと思うなら、この旅はきっと、その期待にちゃんと応えてくれると思います。

Author: ネイチャーガイド 今長谷 啓享

自分が行って楽しいと思える旅じゃないと作らない!というポリシーで現地調査・企画・手配を行い、現地の案内まで、ネイチャーガイドとして体験型で少人数のくつろぎの旅を提供。北極圏から南極大陸まで、歴史と文化に溢れる世界遺産からヨーロッパや南米アンデスの山々まで、海外への渡航歴200回以上、パリやベルギーにも駐在経験のある旅人。元山岳ガイドの経験も活かし「自然や世界遺産が好きな方々を体験型で少人数のくつろぎの旅の世界」へ今も日々案内中。