ニュージーランドの「世界一美しい散歩道」を歩きたい
歩き抜いた達成感を感じたい!
ニュージーランド本来の姿を彷彿とさせるミルフォードトラック。
沢山のハイカーたちがこの33.5マイル(54km)もあるコースを制覇するために海外からやってくる。私もその一人だ。
温帯雨林の中を仲間と一緒に歩き、シダや苔など、多種多様の植物や美しい景色を体感する。恐竜が出てきそうなこの森は、まるでこの場所の時代だけが異なっているように感じさせる。人を恐れず、地上を堂々と歩く鳥たちもまた、そんな未知の世界にいると思わせる。
「まずはこの深い森を十分に味わい、歩き切る」
その思いを胸に、私は仲間と共にミルフォードトラックを歩いた。
歩いたからこそ味わえる達成感と感動。
この深い森がの道が作られた理由でもある「サザーランドの滝」を目指した。
サザーランドの滝は私の想像を見事に覆した。
響き渡る轟音と滝つぼに豪快に水を叩きつけるその姿は凄まじく、世界で5番目に高い滝はまるで天から降ってくるような迫力だった。
滝から離れた後も、その迫力と轟音は頭の中に鮮明に残っている。
これは歩いたものにしか味わえない感動だ。
そしてミルフォードトラックを歩き抜いたものだけが泊まることを許されるロッジで達成感に浸りながら寛ぎの時間を過ごす。
歩いてきた美しい森、仲間たちの充実の顔、達成感満点の感動のゴールを思い出しながら、外の景色を眺める。
「でも、まだこの旅は終わってない」
そう、ミルフォードトラックを歩いただけではこの旅は完成しない。
歩いたからこそ味わえる景色が明日の朝、私たちを待っている。
氷河の谷に海水が入り込んでできた地形、絶景の「フィヨルド」を楽しむ朝の静かなクルージングに出かける。
「歩き抜いた喜びがあるからこそ味わえた景色」
再び深い森で見た景色がよみがえり、この地の美しさを深く理解できた。
ニュージーランドを旅するなら外せない時期と見所
【ニュージーランドは11~12月がベストシーズン】
ニュージーランドは南半球に位置し、暦と季節は日本と逆になります。
春は10月から11月、12月から2月までは夏、3月から5月が秋、6月から9月が冬になります。1年を通して温暖な気候で、一年を通じて温度差は日本ほど大きくありません。
夏の期間だけ歩くことができる散歩道「ミルフォードトラック」を旅するオススメの時期は、11月から12月の初夏を迎えた季節です。
現地の季節は夏ですが、ニュージーランドは緯度が高い場所に位置しているので日本で想像する真夏の暑さにはなりません。また、ミルフォードトラックは雨が多く、夏でも日によっては雪が降る場所があります。
初夏のミルフォードトラックがオススメの理由は世界最大のキンポウゲ科の高山植物「マウンクックリリー」が満開の時期を迎えているからです。中心が黄色で花びらが透き通るような白のマウントクックリリーが所々で私たちを歓迎してくれます。
飛行機で東京からニュージーランドにある北島のオークランドまで約10時間かけて移動します。オークランドから南島のクライストチャーチまで1時間半ほどかけて飛行機で行きます。クライストチャーチからグレイシャーブルーに輝く氷河湖「テカポ湖」や「善き羊飼いの教会」の見学など、いよいよニュージーランドの旅が始まります。
高山植物マウントクックリリーは、日本を出発して3日目のニュージーランド最高峰マウントクックの展望を楽しむハイキングで出会うことができます。
さらにニュージーランドを南下して「女王が住むにふさわしい町」という意味の「クィーンズタウン」へ。
夏はハイキング、冬はスキーというアウトドアスポーツのメッカで街はワカティプ湖という氷河湖の湖畔に立つ街です。まさに女王が住むにふさわしいと頷けから美しい街です。
そしてこの街からミルフォードトラックへの旅が始まります。
ミルフォードトラック
【ニュージーランド本来の自然や生き物の姿を楽しむ】
ニュージーランドは自然・動物保護に特に力を入れています。
羊などのイメージあるかもしれませんが、陸で見られる哺乳類はコウモリやオットセイを除き全て持ち込まれたものです。またパンフレットなどを飾るルピナスも同じく海外から人間が運び入れたもので、ニュージーランド本来の美しさの代表とは言えません。
では、ニュージーランド本来の動物たちとはなんでしょう。
その代表はキーウィなどの鳥類です、人間が入る前は鳥たちの王国でした。キツネなどの哺乳類も、蛇など大型の爬虫類もいなかったため、捕食される心配がなかった彼らは飛ぶ必要さえもなく、いまでも飛ばない鳥たちがいるのはそのためです。
ニュージーランドの自然を牧羊地を開墾や園芸種の花で変えてしまい、また、鳥やその卵を狙う多くの動物をもちこんだのが人間。結果として幸せに暮らしていた多くの動植物を絶滅させてしまった取り返しようがない過去があるのです。
今ではニュージーランドに入国する時に厳しい持込品の検査があり、これ以上人間がニュージーランドの自然に影響を与えないような努力がなされています。
今回ご紹介するミルフォードトラックも自然を守るために入場制限が行われており、ガイド付で歩けるのは1日50名限定です。
ミルフォードトラックではニュージーランド本来の姿を残す温帯雨林の森を楽しむことができます。豊富な水量がある上、人間をはじめ水を汚すような動物がほとんどいないため、水は濁りや汚れがなく、綺麗で、澄み切っています。流れる水を飲むことができ、都会の硬水とは違い、柔らかくとても美味しいです。空気も澄んでいてまさに森林浴をしならが歩きます。
ミルフォードトラックの集合場所はクィーンズタウン。
出発の前日に行われるブリーフィング(説明会)に参加します。ツアー全体の流れや必要な装備品の説明会です。足りないものがあっても大丈夫!説明会ではリュックや雨具、ストックなどの貸し出しが行われ、会場の下にトレッキング道具のショップもあります。
出発当日は前日説明会が行われた建物に集合(ステーションという建物)。ガイドさんの自己紹介などが行われた、指示通りに荷物を専用のバスに積み込んで出発。途中のテアナウの街で昼食をとり、さらにバスでテアナウダウンズの船着場へ。ジェットボートに乗ってミルフォードトラック33.5マイルの起点であるグレードワーフへ。ここから歩き始めます。
初日のロッジは拍子抜けするほどあっという間に到着します。
本格的な山歩きは翌日から、森の中を三日間歩き通します。
ミルフォード3日目は森を抜けて峠に登り、高山植物「マウントクックリリー」や氷河の風景を楽しみます。
森の中は、深い絨毯のような鮮やかな緑の苔が木や道を覆い尽くし、多種多様なシダが頭上や地上にしなやかに生えています。「ゴブリンモス」「オールドマンズビアード」などの植物が木から垂れ下がっている少し不気味な雰囲気も。
巨木の南極ブナが立ち並び、氷河地形のため土壌が薄いことから大きく育った木が倒れて道を塞いでいるなんてこともあります。シダの種類によっては10mを超える木のようなシダも生え、映画「ジュラシックワールド」を彷彿とさせる鬱蒼とした深い森です。
これが本来のニュージーランドの姿なのかと感動します。
ミルフォードトラックには鋭い目つきの「ウエカ」という飛ばない鳥や、つぶらな瞳でフレンドリーな「ロビン」という鳥など、多くの鳥が生息している鳥たちの森でもあります。人や外敵に襲われた経験がないため、人間が来ても恐れず足元に寄ってくることもあります。靴紐を引っ張られるようなことがあれば逆に幸せですね。
国鳥のキーウィは夜行性なのでまず出会うことはありません。夜中に耳を澄まし特徴のある鳴き声を聞けたら運が良いという感じです。
【歩いたからこそ感動が大きいミルフォードトラック】
森歩きが続くミルフォードトラックの中でぽっかり頭を森の上に出す一日があります。
ミルフォードトラック3日目。
登り700m、下り900mという散歩道ミルフォードトラックで唯一の難所と言えるのがマッキンノン峠を越える日です。
難所と言ってもルートの安全は確保されていますので危険個所はありません。
13段の九十九折を一歩ずつ進み、やや疲れを感じたころには森林限界を超えて風景が一変。それまでの森の中に道は高山植物が咲き乱れる道へと姿を変えます。お花があると元気百倍になるから不思議です。
多くのデイジー類、そしてなんといってもニュージーランドの高山植物の女王のマウントクックリリーも競うように咲いています。やがてこのルートを発見したクィンティン・マッキノン氏の名がついたマッキノン峠へ。その先の最高地点を越せば後は下りです。
3日目は峠越えを終えてもまだ大事な行事が待っています。
ミルフォードトラックが作られた理由でもあるサザーランドの滝はロッジに着いて、荷物を下してから出かけます。
この世界5位の580mの高さを誇るサザーランドの滝は観光客には決して見る事が出来ない滝です。
ミルフォードトラックのほぼ中央部にあり、もちろん車道は通じていません。
つまりミルフォードトラックを歩いた者にだけその姿を見せる滝なのです。
その水の落ちる轟音と豪快な水量の迫力に圧倒されてしまいます。
滝が近づくと森の中に先ず轟音が届き始めます。
ふと気が付くと森の木々の切れ間にその姿を現しています。
さらに進むと雨も降っていないのに森はしっとりと濡れ始めます。サザーランドの滝の水が遠くまで届いているのです。
そしてついに目の前に太い水の柱と化したサザーランドの滝が立ちはだかるように現れます。
人を薙ぎ払うように水しぶきと風を感じることができます。
滝壷から上を見上げてもあまりに高く、そして台風のように顔をたたく水しぶきで滝の流れ出しを確認することができません。
さすが世界第5位!
この滝、この風景はミルフォードトラックを歩かない人は決して見る事ができない。
33.5マイル 54km 完歩!
何事もやり遂げる事は嬉しい。それを旅で楽しめる。
しかも世界中から集まった仲間たちと一緒に!
世界一美しい散歩道で!
ミルフォードトラックを歩くだけが今回の旅の目的ではありません。
実はミルフォードトラックのハイキングは、ミルフォードサウンドをより味わうためとにあると言っても過言ではありません。なぜならミルフォードサウンドに一軒だけあるロッジはミルフォードトラックを歩いた人だけが泊まることを許されているからです。
氷河の谷に海水が入り込んでできた地形「フィヨルド」と世界最高峰のマイターピークが海面から天に向かって聳え立っている絶景をロッジから見ることができます。夜は綺麗な星空と、森の中で蛍のように光る土ボタルの様子を楽しめます。
ミルフォードトラックを歩いていない観光客はクイーンズタウンからバスで往復8時間の日帰りになるため、ミルドフォードサウンドクルーズは大混雑で気忙しいものになります。
一般観光客が帰っていくのをよそにゆったりとした時間をミルフォードサウンドにあるロッジで過ごし、美しい夕焼けと朝焼けを見て、翌朝に観光客が来る前の静かなクルーズを独占するという大きな特典がミルフォードトラックを完歩した私たちにはあります。
静かなクルーズでは様々な滝、イルカやオットセイに出会うことができます。
ツアーガイドメモ
【ガイドも仲間もいる安心の旅】
50人が寝食を共にしながら、ミルフォードトラックを歩きます。現地ガイドが4人ほど付いてくれるので安心です。50人が列を作って歩くというより、先頭ガイドと後方ガイドの間を自分たちのペースで歩きます。先頭と一番後ろでは到着時間は数時間も違ってきます。それほど自分のペースで歩けるということです。
今回ご案内した旅は現地ガイドに加えて、日本から20回以上もミルフォードトラックの経験がある日本人ガイドが我々のグループ専属で一緒に歩いてくれます。現地ガイドはあくまでもレンジャーガイドで50名の安全を守ることが目的なので常に一緒に歩いてくれるわけではありません。団体行動ということでどうしてもオーバーペースになりがちな歩行ペースに気を付けて、鳥類や植物、景色などの見どころを見極めながら一緒に歩いてくれます。
【ロッジの時間は快適でゆっくり休めます】
今回の旅では山のロッジが3つ、ミルフォードサウンドのほぼホテルなみのロッジが1つ、計4つのロッジに泊まります。山のロッジの一般的な部屋には2段ベッドが2~4台ある4名~8名部屋。さらにシャワー、洗面、共同の水洗トイレの設備があります。
このほかに追加料金がかかりますが、トイレやシャワー、洗面所も専用の設備があるツインルームやダブルルームもあります。
朝食はトーストにジャムから始まり、温かい卵やハムの料理も出されます。
昼食は朝食の前に食材を用意してくれるので、各自で適当に詰めてお弁当を作り持って行きます。昼食は好きな場所で食べても良いのですが、ガイドがコーヒーやココアなどの温かい飲み物や冷たいジュースを用意して待ってくれている東屋で食べることもできます。
夕食はスープか前菜、選択できるメイン、デザートの3コースメニューです。飲み物はビールやワインです。ニュージーランドのワインは有名で白ワインが主体です。ニュージーランドのビール「スパイツ」はギネスとラガーの中間のような味わいで美味しいです。
ロッジでは服を手洗いで洗濯して、あっという間に乾く乾燥室で乾かすこともできます。
毎日洗濯できて、トレッキング中の荷物を軽くできるのは山歩きをする我々にとってはとても重要なポイントです。
33.5マイルを歩ききってのミルフォードサウンドで泊まるマイターピークロッジは全て2人部屋です。各部屋にトイレやシャワーが付いています。扱いは一応はロッジ、つまり山小屋ですが、山小屋として世界一の設備でしょう。ホテルとの違いはテレビや電話がないことくらい?
【ハイキングは中級レベル、雨の日はむしろ運が良い】
ミルフォードトラックのハイキングは峠を登る以外はほとんど標高差・高低差が200m以下のほぼ平坦の道を歩きます。ハイキングのレベルとしては中級で、元気で普段から歩いている人でも参加できます。山の経験は特に問いません。
旅行で、特に山歩きで雨といえば、運が悪いと思うかもしれませんが、ミルフォードトラックの雨は晴れの日とはまた違った雰囲気と空気が味わえます。雨がふればこそ生まれ残った森です。
雨が降ってくれたら運が良いと思えるほどです。
雨でも楽しめる世界一美しい散歩道!
ニュージーランドのトリビアを一つ
飛ばない鳥や独特の植物も多いニュージーランド。森の中にラーンツウッドという木があります。ラーンツとは槍という意味。つまり槍の木。
幼木の葉はまさに槍の如く固くギザギザで幹に対してまばらに生えています。しかし、この木が成長してある一定の高さに育つと、柔らかそうな葉を多く茂らせる姿に一変します。おそらく森の中で幼木を見て、成木を当てるのはまず無理でしょう。
実はこの木はかつてこの国に住んでいたダチョウよりも大きかったと言われる鳥・モアに葉を食べられることを避けるためにこの姿を変える方法で生き残ったと言われます。飛べない鳥だったモアは頭頂部の高さは3.6mもある世界最大の鳥でした。ラーンツウッドはこの鳥に葉を食べられる高さを越すまで成長したら葉の姿を変えて成木になっているのです。
モアが人間により絶滅させられて既に500年。しかし今でもラーンツウッドはそのスタイルで森の中で生きています。
ニュージーランドQ&A
パスポート・ビザ(査証) | パスポートの残存期間は滞在日数+3か月が必要です。ビザは旅行目的で3か月以内の滞在の場合は不要です。 |
公用語 | 英語 |
電圧・コンセント | 230ボルト/50ヘルツ コンセントはOタイプ |
貨幣 | ニュージーランド・ドル 1ニュージーランド・ドル=約76円 アメリカドルが使える場所が多いので、アメリカドルを準備しておけばほとんどの場所で使えるが、お釣りは現地通貨で払われる場合あり |
水 | 水道水の飲用可能ですが、ご心配な方はミネラルウォーターの購入をお勧めします。 |
日本からのフライト時間 | 東京から直行便で北島オークランドまで約10時間半。 南島のクライストチャーチへはさらに1時間少々、クィーンズタウンはさらに2時間弱。 |
チップ | 特別な場合を除いて不要です。 |
虫 | 森にはサンドフライというブヨがいます。現地でブヨ避けを購入することをお勧めします。 |
治安 | 一般的に良好。但し空港など人が集まる場所には置き引きやスリがいる場合があります。 |
時差 | 通常は日本より3時間進んでいます。サマータイム期間は3時間になります。 |
持っていくものリスト ニュージーランドに行く準備
一般的な旅の必需品
パスポート、航空券、お金、靴(スニーカー)、めがね・コンタクトレンズ、帽子、傘(折り畳み傘)、腕時計、スーツケース、ショルダーバッグ(リュックサック)、携帯電話(スマートフォン)、コンセントプラグ、上着、長袖シャツ、半袖シャツ、ズボン(スカート)、下着、靴下、タオル、常用薬、風邪薬や頭痛薬・胃腸薬などのお薬、カットバン、洗面用具(歯ブラシやヘアブラシなど)、化粧品(日焼け止め 男性なら髭剃り)、ハンドタオル(ハンカチ)、ティッシュ、筆記用具、カメラ、カメラの充電器、液体物機内持ち込み用ビニール袋、パスポートコピー、石鹸やシャンプー、ビニール袋
ニュージーランド・ミルフォードトラックの旅で私が追加で持っていくもの
雨具(ゴアテックス素材などで上下別のセパレートタイプ 防風効果もある)、(軽)登山靴、厚めの山用靴下、大き目のリュックサック(40リットル以上)、フリースやセーターなどの防寒具、暖かい手袋と帽子、ヘッドランプ(山小屋泊)、スリッパかサンダル(山小屋用)、サングラス(紫外線が強い)、リップクリーム、トイレットペーパー(備え付けがない場合もある)、耳栓(山小屋安眠用)、シーツ(山小屋用・現地レンタル可)、ブヨ避け(現地購入のみ・日本製不可)、着替えなどを入れる(防水)袋
ニュージーランド入国で気を付ける事
山の道具(リュック、登山靴、ポール)に土がついていないように掃除しておく(入国時に検査がある)、あまり食品は持ち込まない(入国時に検査がある。食品は原則として全て要申告となる)
今長谷
ミルフォードトラック。
太古の昔、日本を含め世界に広がっていた温帯雨林が唯一残る美しい森歩きです。
世界中からのトレッカーが共通の目的で集まり、ともに汗を流し、ともに感激を味わい、仲間になり、はかなくそれぞれの国に戻って行く・・これもミルフォードトラックの魅力です。