今長谷
ネイチャーガイドの今長谷です。日本を出て国際線の空の旅と、アルゼンチン・ウシュアイアからの船旅を合わせて6日目の朝、ついにたどり着いた南極大陸。これほど到着するまでの期待が高まる旅は他にはないでしょう。南極といえばほとんどの人がまず連想するのはペンギン。今回は南極のイメージリーダーのペンギンたちをネイチャーガイド的視点で写真満載でお届けします。
野生の世界に生きるペンギン
南極に住む種類は4種類のみ
南極のペンギン VS 動物園のペンギン
今長谷
南極まで行かなくてもユーモラスなペンギンの姿は動物園で楽しめます。彼らも間違いなく正真正銘のペンギンです。
しかし大きく違うところがあります。
それは南極で生まれ、餌を探し、雛を育て、やがて一生を終える・・そのすべてが自然の中ということ。捕食者や厳しい気候のなかで生きる野生のペンギンだということです。
白いヘッドバンドが目印
南極の代表選手 ゼンツーペンギン
今長谷
南極大陸をクルーズで訪れてゼンツーペンギンを見ないで帰ることは困難といえるほどゼンツーペンギンは数多く住んでいます。体長は50~90cmで体重は5~8.5kg。ペンギンの中では3番目に大きな種類です。頭の上の部分に白いヘッドバンドのような羽毛が特徴です。約100日間で雛を育て上げて冬が来る前に海に帰って行きます。
あごのひもが目印
ユーモラスなヒゲペンギン
今長谷
ゼンツーペンギンと同様に南極で数多く目にするのがヒゲペンギンです。体長は70~75cmで体重は4~7kg。ゼンツーペンギンよりやや背が高いですが、体重は軽く細身のイメージがあります。あごの下に紐のような羽毛が特徴でどことなくユーモラスな印象です。こちらも約100日間で雛を育て上げて冬が来る前に海に帰ります。
黒くてとがった頭と白い目が目印
南極のアイドル アデリーペンギン
今長谷
他の2種類に比べて海に帰る季節がやや早く、個体数も少ないため見つけるのが難しい印象なのがアデリーペンギンです。体長60~70cmで体重は5kgほどの中型のペンギンですが、他より小さめでかわいい姿から南極のアイドル的な存在です。アニメ映画にも登場しますのでその印象を持つのは私だけではないようです。
野生の世界
雛には時間がない
今長谷
短い南極の夏。雛たちは冬が来る前に海に入って餌をとる能力をつける必要があります。産毛でおおわれた彼らの姿はかわいいのですが、防水性がない産毛が生え変わらないと海には入れません。彼らには時間がありません。必死で親を追いかけて餌をねだります。少しでも早く成鳥になるために。
まさに食うか食われるか
捕食者との闘い
今長谷
巣で待つ雛のために親鳥は海に出かけナンキョクオキアミなどを捕らえて巣に戻ります。しかし、その海は安全とは程遠いところ。海をうかがうペンギンの目の前に最強の捕食者のヒョウアザラシが待ち受けています。残酷に感じてしまう場面に出くわすこともあります。襲われた親鳥、そしていつまでも戻らない親鳥を待って冷たくなっていく雛。南極と動物園が決定的に違う世界がそこにあります。
かわいさ全開
ペンギンの雛たち
ネイチャーガイド今長谷
厳しい世界に住むペンギンたちですが、やはり何気ない瞬間の雛たちの姿には心が和みます。2月は雛たちもすっかり成長し運動会のように走り回っています。また漁に出た親鳥を待つ雛たちが集まったコロニーの風景はまるで幼稚園です。
今長谷
いかがだったでしょうか?
ペンギンといっても侮ることなかれです。野生の世界に生きるペンギンはたくましく、明日をも知れぬ世界で生きています。目の前でトウゾクカモメに襲されれる雛を必死に守ろうとする親鳥の姿は日常茶飯事です。南極条約で5m以内に近づくことは禁止されていますが、めったに人間を見ないペンギンのほうから物珍しそうに近寄ってくることもあります。やはりペンギンはかわいい南極の主役です-->次回は南極の海の主役のクジラの世界をお届けしますのでお楽しみに!