南極観光は規制に要注意!ルールを守った観光を行うための重要事項

南極観光は規制に要注意!ルールを守った観光を行うための重要事項

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ネイチャーガイド今長谷

ネイチャーガイドの今長谷です!

南極は、人の手の加えられていない自然の宝庫です。
南極に生息する動物は、自然のまま過ごしています。
そのため、南極では、細かなルールがしかれているのです。
そこで今回は、南極の規制やルールについて解説します。
南極観光に行く前に確認して、ルールを破らないようにしてください。

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観光客が南極で守るべきルール

南極クルーズ船|南極・南極上陸クルーズ旅行@ブループラネットツアー

「南極の環境データベース」では、「南極訪問者のための手引き」として、いくつかの規制を記載しています。以下は、データベースを参考に、南極の規制について紹介します。

野生動物の保護について

南極では、多くの野生動物が暮らしています。
観光客に限らず、南極に足を踏み入れる場合は、環境省が発行した許可証に従う場合を除き、有害な干渉を禁止としています。
守るべきポイントは、以下のとおりです。

  1. 海上または陸上において、野生生物を攪乱するような方法で航空機、船舶、小型船舶等の交通手段を使用しない
  2. 鳥類またはアザラシ類に餌を与えたり、触ったり、扱ったりしないこと。また、鳥類またはアザラシ類の行動に影響を与えるような方法で接近したり、写真撮影をしないこと。
  3. 植物を傷つけない
  4. 銃や爆発物を使用しない
  5. 南極固有種でない動植物を持ち込まない

南極固有種でない動植物というのは、観葉植物やペットの持ちこみです。
生態系を崩してしまう可能性があるので、基本的に外の物は持ちこまないようにしてください。

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いくらペンギンがかわいくても5m以内に近づくことは禁止されています。以前はペンギンから近寄ってくる場合は問題にされていませんでしたが2023年2月に訪れた際はペンギンから近づいてきても5mの距離は保つようにという指示がありました。より厳しくなってきた印象です。

保護地区の尊重について

南極には、特別に保護されている地域があります。

保護地区については、環境省が発行する許可証に従う場合を除き、立ち入り禁止です。

守るべきポイントは、以下の3つ。

  • 特別な保護や制限がある地区の位置や、保護地区内及びその付近で実行可能な活動や立ち入りに関する規制を知る
  • 適用される制限を守る
  • 史跡、記念物及びこれらに関係する人工物を傷つけたり、持ち去ったり、破壊したりしない

2023年現在、南極史跡記念物は90カ所指定されており、他保護地区としては75地区が指定されています。

科学研究の尊重について

南極には科学研究のための施設がありますが、基本的に干渉してはいけません。

守るべきポイントは、以下の4つです。

  • 南極の科学施設及び支援施設を訪問する場合には事前に許可を取り、到着の24〜72 時間前に確認の連絡をする
  • 訪問に関する関連規則を厳守する
  • 科学機器や標識柱の妨害をしたり、持ち去ったりしない
  • 実験研究地点、野外調査キャンプまたは補給品を荒らさない

ツアーで施設に入るケースはほとんどありませんが、注意点として頭に入れておきましょう。

安全対策について

南極観光は危険がつきものです。

ツアーと言えども「誰かが守ってくれる」のような考えではなく、自分の身を自分で守らなければいけません。

そのために、以下のポイントに注意してください。

  • 自分の能力と南極環境がもたらす危険性をわきまえたうえで行動する
  • 常に安全を念頭において行動計画をたてる
  • 陸上及び海上において、すべての野生生物と安全な距離を保つ
  • リーダーの助言や指示に留意して行動する
  • 団体からはぐれないようにする
  • 適切な装備及び経験なしに氷河や大雪原の上を歩行しない
  • 救援活動に期待しない
  • 緊急時以外は緊急避難所に入らない
  • あらゆる喫煙規制に留意し、特に建物の周囲ではこれを遵守して火災の危険を予防するよう十分注意する

上記にも記載があるように、南極では何かあった場合でも救急活動に期待できません。

常に自分の身を自分で守りながら行動する必要があります。

そのため、団体で南極へ行った場合においても、自分勝手な行動をしないようにしてください。

南極の状態をそのままに

南極は、人による影響を受けていない場所です。

現在の環境をそのまま残すためには、一人ひとりが環境に配慮しなければいけません。

注意するべきポイントは、以下のとおりです。

  • ごみや残飯を地面に捨てない
  • 屋外での焼却は禁止
  • 湖や小川を乱したり、汚染したりしない
  • 海洋に投棄する全てものは適切に処分する
  • 岩石や建物に絵を描いたり、名前を彫ったり、落書きをしない
  • 岩石、骨、卵、化石、および建物の一部あるいは中身を含め、生物標本または地質標本、あるいは人工物をお土産として採集したり持ち去ったりしない
  • 建物は利用されているか、放棄されているか、無人であるか、あるいは緊急避難用であるかに関わらずその外観を損なったりもしくは破損しない

つまり、南極にあるすべてのものに、影響を与える行為が禁止です。

南極に限らず、ゴミ捨てマナーなどは観光時に必ず守るべきポイントなので、絶対にポイ捨てなどはしないでください。

南極条約とは

南極では、世界中が守るべき条約が定められています。

南極条約の概要は、以下の14条です。

  • 南極地域は、平和的目的のみに利用する。軍事基地及び防備施設の設置、軍事演習の実施並びにあらゆる型の兵器の実験のような軍事的性質の措置は、特に、禁止する。
  • 国際地球観測年の間に実現された南極地域における科学的調査の自由及びそのための協力は、この条約の規定に従うことを条件として、継続するものとする。
  • 南極の科学的プログラムの他、科学要員および科学研究の結果は最大の協力、効率、事業の経済性の実をあげるため相互に交換することができる。
  • この条約は、いずれかの締結国がかつて主張したことがある請求権あるいは領土主張を放棄したものと解するものではないが、この条約が有効な限り、新規に同様な主張をなす事はできない。
  • 南極地域におけるすべての核の爆発及び放射性廃棄物の同地域における処分は、禁止する。
  • 条約の規定は、南緯六十度以南の地域(すべての氷だなを含む )に適用する。た
  • の条約の目的を促進し、かつ、その規定の遵守を確保するため、第九条にいう会合に代表者を参加させる権利を有する各締約国は、この条に定める査察を行なう監視員を指名する権利を有する。
  • 条約の前文に列記する締約国の代表者は、情報を交換し、南極地域に関する共通 の利害関係のある事項について協議し、並びに次のことに関する措置を含むこの条約の原 則及び目的を助長する措置を立案し、審議し、及びそれぞれの政府に勧告するため、この 条約の効力発生の日の後二箇月以内にキャンベラで その後は 適当な間隔を置き かつ適当な場所で、会合する。
  • 条約の解釈又は適用に関して二以上の締約国間に紛争が生じたときは、それらの締約国は、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決又はそれらの締約国が、選択するその他の平和的手段により紛争を解決するため、それらの締約国間で協議する。
  • この条約は、第九条に定める会合に代表者を参加させる権利を有する締約国の一 a 致した合意により、いつでも修正し、又は改正することができる。

(参考:南極条約|環境省から一部を抜粋)

これらの南極条約に違反した場合、特別なペナルティは規定されていません。

しかし、国際的非難の的になる可能性があるため、観光客においても、守らなければいけないのです。

観光客が南極に足を踏み入れる前に確認しておくべき項目

観光客が最も気を付けなければいけないのが、外来種の持ちこみです。

普段着ている服などに付着しているケースもあるため、徹底しておかなければいけません。

そのために、南極に行く前には、以下の2つを徹底してください。

  • 衣類を徹底的に綺麗にすう(泥や有機物がついていないか確認)
  • 清潔な道具を持っていく(アウトドア装備はクリーニング必須)

また、南極に到着してからは、以下の5つを意識してください。

  • 旅行中は靴や衣服の除染処置を行う
  • 有機物を含む地域を歩く場合は、靴に付着していないか確認
  • 道具は常に清潔にしておく
  • 外来種を見つけたらすぐにツアーガイドに報告
  • 他の人と情報を共有する

外来種は、普段気にしていない細かな部分に付着するので、忘れずに徹底しましょう。

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ネイチャーガイド今長谷

我々が実際に規制の厳しさを実感するのはクルーズ船の中で行われるバキューム活動です。上陸地にもっていくものは新品でない限りすべて持ち寄ってスタッフが掃除機でくまなく吸ってくれます。参加は義務というスタイルから南極の自然を守る意義、そして姿勢を実感します。

南極クルーズ船|南極・南極上陸クルーズ旅行@ブループラネットツアー

一人ひとりのルールの徹底が南極を守る

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ネイチャーガイド今長谷

南極観光では、一人ひとりの意識がとても大事です。
一人でも輪を乱してしまうと、事故や怪我だけではなく、南極の生態系を崩してしまうきっかけになりかねません。
今後も南極観光を行えるようにするためにも、必ずルールを守ってください。
今回解説した内容や注意点は、南極に向かうクルーズ船でレクチャーが行われるので、レクチャ―内容も必ずしっかり聞くようにしましょう。

Auther: ネイチャーガイド 今長谷 啓享

自分が行って楽しいと思える旅じゃないと作らない!というポリシーで現地調査・企画・手配を行い、現地の案内まで、ネイチャーガイドとして体験型で少人数のくつろぎの旅を提供。北極圏から南極大陸まで、歴史と文化に溢れる世界遺産からヨーロッパや南米アンデスの山々まで、海外への渡航歴200回以上、パリやベルギーにも駐在経験のある旅人。元山岳ガイドの経験も活かし「自然や世界遺産が好きな方々を体験型で少人数のくつろぎの旅の世界」へ今も日々案内中。